嵐の活動休止発表……企業コンサルタントが、ジャニーズグループ「15年寿命」説を提言

 

 1月27日、国民的アイドル・嵐の活動休止が突如発表された。同日午後5時、ファンクラブ会員向けサイトで、メンバー5人によるメッセージ動画が公開され、活休の報告とその経緯を説明。リーダー・大野智が2017年6月、「2020年をもって、自分の嵐としての活動を終えたい」「一度、何事にも縛られず自由な生活をしたい」とメンバーに告げ、話し合いを重ねた結果、2020年末でグループ活動を休止するとの結論に至ったという。

 同日午後8時からは記者会見も行われ、メンバーは「解散ではない」ことをあらためて強調、また活休期間は明確に決められていないことも明かしていた。会見で見せた“誰も悪者にしない”という姿勢や仲睦まじい様子には、嵐ファンから「感動した」「やっぱり嵐は5人で嵐」「再始動までずっと待ってる」など、温かなコメントが寄せられていたものの、一方で「大野くんの気持ちもわかるけど、やっぱり悲しい」「このまま事実上の解散になりやしないか」「こんな大勢のファンがいるのに、なぜ……」と複雑な胸中を隠しきれない人も少なくない。

 そんな中、「嵐がいま活休を発表したのは正しい」と断言するのが、企業コンサルタントの大関暁夫氏だ。ビジネスの視点で、「ジャニーズの男性アイドルグループ」という商品のライフサイクルを考えたとき、嵐は英断を下したと評価できるという。今回、数々のジャニーズグループの例を挙げながら、「商品として」のアイドルグループの寿命を考察してもらった。

ジャニーズの商品戦略は甘い

 

――嵐の活休発表を知った際、率直にどのように感想を抱きましたか。

大関暁夫氏(以下、大関) 真っ先に、ジャニーズ事務所は、根本的な商品(=アイドルグループ)戦略をちゃんと考えていないなと感じました。商品には、それぞれの“ライフサイクル”というものがあります。複数の事業を持つ企業が、どの事業にどれだけの投資を行うかという戦略を考える際、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」というフレームワークを用いることがあるのですが、それにジャニーズのアイドルグループ(商品事業)を当てはめて考えたとき、戦略の甘さを感じたのです。

――PPMとはどういったものなのでしょうか。

大関 PPM分析では、4つのポジションに事業を分類していきます。その4つは、事業のライフサイクルを示しており、「問題児(積極的に投資をしていく売り出し中の商品)」→「花形(投資を続けるべき利益を上げている商品)」→「金のなる木(投資をしなくても利益を生む商品)」→「負け犬(投資は不要で利益も少ない商品)」となります。

 ジャニーズのこれまでのアイドルグループをいくつか例にして解説していきますと、最初の商品である初代ジャニーズは、1964年にレコードデビューし、解散は67年だったので、実質3年間しか活動していませんでした。当時のアイドルの寿命は短く、また事務所も手探り状態だったためか、「花形」の段階で人気がピークアウトして解散したと見ています。次の商品である68年レコードデビューのフォーリーブスは、78年まで約10年活動。「花形」の状態になったとき、積極的にテレビで売っていくなどという新たな投資をして「金のなる木」にまで成長し、7年目くらいで人気がピークアウトして「負け犬」となり、解散に至ったという印象です。

――82年デビューのシブがき隊は88年に解隊と、6年しか活動しませんでした。しかし、85年デビューの少年隊は、ここ数年グループでの活動はないですが、現在も公式サイトにページがありますし、ファンは再始動を期待しています。

大関 少年隊が最後にCDシングルを発売したのが2006年で、これが前作から5年半ぶり。01年までは、定期的にCDを出していて、冠番組の放送が02年までだと考えると、舞台を除く少年隊の活動は、85~2000年初頭の約15年間がメインであったと言えるでしょう。デビュー10年頃に「金のなる木」に育ち、15年でピークアウトを向かえ、その後は各々が独自路線を切り開き、グループを自然消滅のような形に持っていったように見えます。恐らく、意図した流れではなかったでしょうが、もし事務所が、少年隊としての活動を引き伸ばそうとしていたら、何か良からぬ結末を迎えていたように思います。

アイドルグループの寿命は「15年」

――良からぬ結末とはなんでしょうか。

大関 「花形」の段階にいるときは、メンバーたち自身も、今目の前のことを一生懸命やろうというモードで、事務所も新しいことをどんどんやらせていこうと投資をします。その後、「金のなる木」に育ち、ピークアウトを迎えると、本人はそのことを敏感に察するものなのです。すると、「このままでいいのか」「もっとやるべきことがあるのではないか」といった気持ちが膨らみ、人によってはグループ活動に不平不満を抱いたり、集中力を欠いて問題を起こすケースが出てくる。少年隊はその前に上手にフェードアウトした“理想形”といえ、ジャニーズのアイドルグループのピークアウト、つまり寿命は「15年」と定義できるのではないかと思うのです。

 そう考えると、25年活動したSMAPがああいった解散の仕方をしたのは、致し方なかったのかもしれません。もちろんSMAPは並外れた人気を誇っていたので、ピークアウトが15年よりもっと後だったとも考えられますが、それでも「15年」からさらに10年もというのは、活動を引き伸ばしすぎたのでは。本人たちは15年を過ぎたあたりから、何らかの問題意識は持っていたように感じます。事務所は「まだまだ儲かる」と無理に活動を続けさせるのではなく、15年を過ぎたあたりで、速やかにメンバーを自由に……解散なり休止なり、グループとしての形を終え、メンバーが個々人として活動する“次のステップ”を用意してあげるべきだったのではないでしょうか。

――TOKIOも、デビュー25周年目を目前にした昨年、山口達也が強制わいせつ事件で書類送検となり、退所に至りました。

大関 それもやはり、ピークアウトを過ぎてもなおグループ活動を続けたことにより、「集中力を欠いて問題を起こす」メンバーが出てきたというふうに見ることができます。山口さんは以前からお酒に溺れるようなところがあったと聞きますし、16年には離婚を経ています。TOKIOが20年を迎えた頃から、山口さん自身もさまざまな問題を抱え、それが犯罪という最悪の形で出てしまったのかもしれません。あの事件は起きるべくして事件だったようにも感じます。

 一方でV6は、CDリリースは続いているものの、すでに個々の活動がメインとなっています。少年隊と同じような形で、うまくグループ活動をフェードアウトに持っていく、いい例だと思いますね。なお、2人組のKinKi Kidsに関しては、グループではなく“コンビ”なので、また話が違ってくるんです。2人だと相対で相談でき、意思の統一がしやすいものですが、3人以上のグループになるとそれがなかなか難しくなります。アイドルグループのピークアウトは「15年」という定義は、あくまで3人以上のグループに当てはまると考えています。

 

嵐だけじゃない……関ジャニ∞にも迫る「商品としての終わり」を、企業コンサルタントが解説


 企業コンサルタント・大関暁夫氏に、ジャニーズの男性アイドルグループの「寿命」について考察してもらったインタビュー前編。後編では、SMAP解散騒動以降、タレントの不祥事や流出が続く事務所が、今後アイドルグループをどのように扱うべきか、話を聞いた。

 

嵐の再始動は「同窓会」レベルが望ましい

――商品としてのアイドルグループの寿命は「15年」とのことですが、嵐は20周年を迎える年に活休を発表しました。

大関暁夫氏(以下、大関) 大野さんは、3年前くらいから「一度何事にも縛られず、自由な生活をしてみたい」という気持ちが出てきたそうですが、恐らく15年を過ぎた頃から、グループを続けていくことへの緊張感がゆるんだのではないでしょうか。それはごく自然なことだと思いますよ。今回のケースで良かったなと思うのは、「メンバーの仲が良い」という点。大野さんの申し出を、ほかのメンバーが突っぱねるのではなく、ちゃんと耳を傾けて受け入れた。もしかしたら、彼らも「嵐は一回終わりにした方がいい」と感じていたのかもしれませんね。先ほど、嵐の活休の発表を受けたとき、ジャニーズ事務所の商品戦略の甘さを感じたと述べましたが、嵐が結果的に21年目で活休することになったのは、“ギリギリ”のところで、いい形で着地できたと思います。大正解と言えるでしょう。もし活動を無理に引っ張っていたら、後味の悪い終わり方をすることになったかもしれません。

――嵐の仲の良さは会見でも表れていたと思います。

大関 5人グループだと、メンバーごとに人気や仕事量の差が生まれ、嫉妬や妬みが生まれやすくなるもの。人間関係がうまくいっていないと、事務所を通じて「なぜアイツにばかり仕事が」などと文句を言うメンバーも出てくるでしょう。人数が増えれば増えるほど、グループというのは運営が難しくなるものなんですが、嵐にはそういったことがなかったように思いますね。

――お話を聞いていると、嵐が活休から明けた後、今と同じような活動をもう一度行うのは、やめた方がいいのではないかとも思えます。

大関 「同窓会」のような形で単発のコンサートを開催し、昔を懐かしむというのが限界だと思います。今と同じような……例えば、「グループのレギュラー番組を週に2本持つ」「年に何枚もCDリリースをして音楽番組に多数出演する」といった形に戻ることはないでしょう。事務所としても、やらせてはいけないことだと思います。一般的にも、一度ライフサイクルを終えた商品が、復刻版として再登場することはあれど、それがまたメインの商品に戻るのはあり得ません。

――嵐の後にデビューした関ジャニ∞が、今年ちょうど15周年になります。

大関 昨年、渋谷すばるさんが事務所を退所した一件も、グループとしてのピークアウトを迎えつつあることの現われだったのでは。事務所が、関ジャニ∞に、エンディングを用意してあげる時期が来たのだと思います。村上信五さんが、12年にマツコ・デラックスさんと一緒に『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)を始めた頃は、まだ“アイドルの延長線上”でMCをしていたように見えましたが、今はそれとは別の次元でMCの仕事をしている気がします。個のタレントとしての自我を感じ始めているのではないでしょうか。

――昨年15周年を迎えたNEWSも、小山慶一郎さんと加藤シゲアキさんの未成年飲酒同席騒動が明るみになり、それぞれ活動自粛と厳重注意を受けたほか、手越祐也さんもスキャンダルが続出するなど、問題が次から次へと浮上しました。

大関 「花形」段階でのピークの高さによって、寿命が短くなったり長くなったりするのですが、ピークが低いと、グループの空中分解や問題が早い段階から目に見えて起こるというのはあるかもしれませんね。
 

King&Princeは「遅すぎた」……これからの事務所のあり方は?

――今後、ジャニーズ事務所がアイドルグループを運営していく上で、どのようなことを心がけるべきなのでしょうか。

大関 SMAPや嵐のような看板アイドルが「金のなる木」になった段階で、次の「花形」候補として、新たな「問題児」を仕掛けていくことです。「いい子がいるからデビューさせよう」ではなく、もっとシステマティックに考えていくべきだと思います。たとえみんな売れっ子になっても、一気にピークアウトを迎えたら、事務所が立ち行かなくなってしまいますから。

 昨年デビューしたKing&Princeが、デビューシングル売り上げ60万枚超えを記録するなど、かなりの人気を集めているそうですが、正直言って仕掛けた時期が遅すぎました。2010年前後に、Hey!Say!JUMPKis-My-Ft2などのグループがデビューしているものの、彼らの「花形」としてのピークが低いことを察した段階で、すぐ次の「問題児」を世に出さなければいけなかったと思います。キンプリが、これからどこまで伸びるかは、事務所にとっての重要事項でしょうね。

――「花形」としてのピークが低いグループのファンは、複雑な気持ちになってしまうかもしれませんね……。

大関 事務所としては、見極めが大事なんです。小粒な商品に投資しすぎても、無駄になってしまいますから。ピークはここだと見極めたら、小さい「金のなる木」にしてあげて、ピークアウトに持っていくべきであり、引っ張れば引っ張るほど、本人たちがかわいそうです。商品戦略としては、オールマイティーな「花形」ではなく、一つのジャンルの「花形」に育てるのも手。当初期待したほどのブレークはなくても、コアなファンや根強い人気をつかんでいると思えば、そのマーケットだけ狙っていくというやり方です。

――今年に入って、滝沢秀明さんが「ジャニーズアイランド」の社長に就任しました。ジャニーズJr.の育成と、彼らの作品や公演をプロデュースしていく会社なのですが、滝沢さんがまさに、新たな「問題児」を仕掛けていくことになります。

大関 滝沢さんは、より速く花形のピークに持っていけるような商品を吟味しているのでしょう。事務所が今そこに力を入れているのは、理にかなっていますし、かなり重要な仕事だと思います。恐らく、ジャニーズ事務所はこれまで、商品戦略を考えず、行き当たりばったりでアイドルグループを売ってきました。しかし昨年、タレントの不祥事や退所が続いたところを見るに、もっと長期的な戦略を練ってアイドルグループを運営すべき段階に来たのではないでしょうか。

――これまでの事務所であれば、嵐が「休みたい」と言っても、聞き入れなかったのではないかといった声が、ファンの間から聞こえてきます。それも事務所が変わろうとしている兆しなのかもしれません。

大関 事務所サイドも、SMAP解散騒動を経て、同じようなことを二度と起こしたくないと感じているのかもしれませんね。アイドルグループビジネスの難しさは、商品が人間であるという点。人間は年を取るほど、精神的にも大人になり、いろいろなことを考えるようになるものです。アイドルビジネスを作り上げたジャニー喜多川社長は、そんなアイドルたちの気持ちをわかってあげられる存在だと思いますし、だからこそ嵐の申し出を受け入れたのでしょう。ファンの皆さんはきっと「永遠に応援したい」と願っていることでしょうが、本人たちのためにも、アイドルグループの終わりを受け入れてあげるべきだと、私は思います。

取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。

 

 

 

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