シャンソンに「幸福を売る男」という曲があった。「少年隊」というグループは、そうなのかも知れない。毎年続けて来た公演「PLAYZONE」が今年で20周年を迎えるという。アイドルグループが20年第一線で活躍を続けていることは見事なことであり、それを支えているファンもたいしたものだ。もっとも、彼らにそれだけの魅力があるからこそ、ファンも時間を共にして来たのだろう。今回は、20周年の記念公演と言うこともあって、赤坂晃や佐藤アツヒロも花を添えている。

ストーリーは過去と未来を交錯させながら、「少年隊」というグループを見つめるといったもので、特にどうということはない。ただ、青山劇場の舞台効果をフルに稼動させ、宙乗りなども活用して、ショーとしての演出効果は華々しいものがある。芝居の後に30分程度のショータイムがつき、これはファンサービスだろう。

感心したのは、錦織一清、東山紀之、植草克秀という三人が、もう40前後でありながら、懸命に頑張っていることである。もちろん、プロなのだから頑張って当たり前だが、良く動き、踊り、しゃべり、唄う。これは、ファンにとってはたまらないだろう。客席も、恐らく98%以上が女性で、しかもその年齢層が幅広い。この公演の当初からのファンももちろん多いだろうが、その後にファンになった人々、少年隊よりも遥かに年上の女性たちまで、みんなが楽しんでいる。言ってみれば、少年隊とファンとの年に一度の「同窓会」のようなものだろう。終演後家路に着く観客の紅潮した満足そうな笑顔、これはエンタテインメントとしてのあり方の一つだ。青山劇場という大きな小屋を一ヶ月満員にしてもなお飽き足らないほどのファンを持っているこのグループの力を強烈に感じた。しかしながら、ここに「演劇的充足感」はないし、それを求めるのは間違っている。彼らに演技の能力がない、ということではない。現在は、こうしたエンタテインメント性を前面に押し出した舞台と、普通の芝居とがボーダーレス化し、その切り分けがなかなか難しい状況になっている。この舞台を、演劇的に批評しようとすると齟齬が起きるだろう。ここは、勘違いをしてはいけない部分だ。この問題については、発表の日時と媒体はまだお約束できないが、「少年隊という存在」(仮題)で改めてご説明することにする。

いつの世にも「スター」は欠かせない。それは、芸能の世界だけではなく、スポーツでも、政治でも同様である。今もスターと呼ばれる人は多い。しかし、その「意識」が変わっているのも事実だ。それは時代と共に変容するものであり、それでよい。一つだけ条件をつけるとすれば、それは「いつまでも忘れられないこと」だろうか。そういう意味では、東山紀之という人が持っているスターの「美学」というものに、かつての長谷川一夫に通じるものを感じた。そして、「中年男性の星」(と言ったら女性ファンには怒られるだろうか)とも言ってもよいこの愉快な三人組の舞台を、男性諸氏に観ていただきたい気がした。


http://www.yumekoubou.co.jp/Enpaku/review/review105.htm
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