演劇批評 2012.10.10掲載
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堂本光一ソロライブ「Gravity」2012.10 横浜アリーナ

数年ぶりの横浜アリーナでのライブ鑑賞となった。毎年、帝国劇場での「Endless SHOCK」は初演の舞台から観ているが、歌手・堂本光一としてのステージを観るのは初めての経験だ。今回はソロ・アルバム「Gravity」を引っ提げてのツアーで、北海道を皮切りに12月の大阪城ホールまで全18ステージ、20万人を超える動員だという。「Gravity」とは引力、もしくは重力という意味で、彼が持つ引力を意味するのだろう。マイケル・ジャクソンの曲を振り付けたことでも知られるトラヴィス・ペインが振り付けた「Danger Zone」をはじめ、このアルバムの12曲を含めて、今回のステージでは合計19曲を歌い、踊る。

私は、J-POPの評論家ではない。曲の内容やライブの構成などについて、知ったかぶりをして恥をかいても意味がないので、ここでは彼が日ごろ見せる舞台と、今回のライブから受けた印象の違いを述べることにする。以前、帝国劇場の舞台に立つ彼の魅力は「憂い」と「翳り」だ、と書いたことがある。毎年ハードルを上げて困難に立ち向かうストイックな姿勢から受ける印象は今も変わってはいない。しかし、当然のことながら、ライブと舞台という、異なったフィールドで見せる彼の顔は違う。客席の照明が落ちた途端に一斉にペンライトが灯り、場内が総立ちになるライブでは彼は「憂い」も「翳り」も見せることなく、激しい踊りとMCの軽やかなトークで客席を沸かせている。どんな役者も「一面」しか持っているわけではなく、違って当然だ。状況に応じたいくつもの顔を持ち、姿が見せられてこそのエンターテイナーであり、今回のステージで見せる堂本光一の姿は、決して二律背反でも矛盾でもない。

帝国劇場の舞台しか観ていない私には、「意外にざっくばらんだな」という新たな印象が加わったが、ここで一つ、不思議な感覚があった。彼は、MCでファンに対し、信頼感と愛情に結ばれた上で、かなりの毒舌を吐き、ファンもそれを待っている節がある。私には初めての姿だったが、白皙の二枚目と毒舌や下ネタのギャップ、という点も面白いが、どんなことを言っても嫌らしく聞こえないのは個性であり、彼のもう一つの魅力だろう。観客に媚を売るわけではなく、突き放すような発言をしても、決して不愉快に聞こえることはない。あえて言えば、何か透明のベールかカプセルに包まれているような感覚がある。ファンの女性たちの間では、彼のことを「王子」と呼ぶ人もいるようだが、その所以は、ここにあるのだ、という確信を覚えた。

2時間半に及ぶステージを、まさに駆け抜け、踊り尽くす印象があった。この日は2回公演と聞いたが、体力と気力だけで乗り切れるものではないだろう。周りのサポートはあるにしても、一万人を超える観客を相手に一人立つ姿の中に、33歳の青年の「孤高」の瞬間を垣間見たステージであった。

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