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新大久保にある東京グローブ座が改装記念の作品に「ロミオとジュリエット」を取り上げた。東山紀之のロミオに瀬戸朝香のジュリエット、鴻上尚史の演出という、斬新な企画ではある。幕開きの演出に一瞬びっくりしたが、テンポのある、いい演出だ。何よりも感心するのは、シェイクスピアの本領である駄洒落や韻が科白に活きていることで、そこに作品の妙味が出た。ただ一点、今の時代の「ロミオとジュリエット」という点では、大詰め近くに戦争のフィルムを流す辺りにそれを感じるが、それがこの作品にふさわしいかどうかは疑問を感じるところだ。

恋する男女のすれ違いの青春悲劇としてあまりにも有名な作品だが、不変のテーマである「愛情」が爽やかに演じられていたのが嬉しい。舞台に嫌らしさがない。東山紀之のロミオが出色で、何よりも爽やかで涼やかである。20年以上のキャリアを持つが、意外なことにシェイクスピア作品は初挑戦だそうだ。しかし、その貴公子ぶりは変わらず、多くのファンが熱い眼差しを向けるのがわかる。清廉でひたむきな愛情と、エネルギッシュな演技が気持ち良い。演技にメリハリがあり、ロミオという男の感情の襞がうまく表現できている。アイドルではあるが、大人の役者になった、と言えるだろう。舞台を爽やかな一陣の風が吹き抜けるような印象である。この人の端正な面差しを観ていて、「ハムレット」や「天守物語」の図書之助を観たくなった。それは取りも直さず、彼に「舞台人」としての素質を感じたからである。

ジュリエットの瀬戸朝香は今回が初舞台。膨大なシェイクスピアの科白を覚えるのに精一杯で、一生懸命さは認めるが、まだ演技や表現というところまで達していない。科白の合間の呼吸法と、手を扱いかねているところに問題があり、これからの勉強が山積みだろう。清純さは買える。

二人を囲む役で目についたのがマキューシオの河原雅彦で、躍動感があり、科白がノッている。こういう若い才能の芽吹きは嬉しい。キュビレット夫人の宇都宮雅代とエスカラス大公の金田龍之介は貫禄の芝居。こういう人が加わると、舞台の厚みと緊張感がグンと増す。そういう意味では、ロレンス神父の渡辺哲も劣らぬ好演である。

400年経ってもなお衰えを知らず、いろいろな演出や配役で上演が繰り返されるシェイクスピア劇の人気の理由はいろいろあるだろう。全作品を上演しようと挑戦している人々もいるほど、役者にとっても観客にとっても魅力の多い作品である。その一つが、こうして新たな現代の息吹を吹き込まれたことには意味がある。多くの試みの中で、この舞台が示した「愛情」の表現は、殺伐とした現代を生きる我々に、忘れていた「何か」を想い出させるのかも知れない。

http://www.yumekoubou.co.jp/Enpaku/review/review79.htm

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