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ショービジネスに携わるものであれば絶対に忘れてはならない言葉、「ショー・マスト・ゴー・オン」。このニュアンスと精神は日本人とアメリカ人では微妙なずれがあるのかも知れないが、「SHOCK」の作・構成・演出を手がけている日系二世であるジャニー喜多川は、そこをうまく捉え、伝えようとして「ショー」としても「ドラマ」としても、観られる作品を作っている。毎回チケットの争奪戦が話題になり、帝劇始まって以来の騒ぎになっているが、それはむしろ表層的な部分であって、この作品の根底に流れている精神を見損なってはいけないだろう。人気アイドル・堂本光一の主演(初演は東山紀之も参加)で形を変えながら今回で3演目を迎えるこの作品だが、これは、人気アイドルがただ舞台に立つ、ということだけのことではなく、ジャニーズ事務所という日本で最大のプロダクションを擁するジャニー喜多川のショーマン・シップの現われた作品なのである。もちろん、売れっ子アイドルを一ヶ月舞台に拘束しておくことはさまざまな意味において大変なことではあるが、それこまでのことをしてジャニー喜多川が表現したかったのは、まさに「ショー・マスト・ゴー・オン」の精神なのである。

もちろん、そこには観客を楽しませるための多くの仕掛けが施されている。第一幕ではショーの部分を中心に上演される。さまざまなイリュージョンやアクション、マジックを中心とした見せ場が次から次へと続き、観客を充分に楽しませる要素を持っている。ショーとして充分に成立するだけの面白みを持っているのは、まさにジャニー喜多川のショーマン・シップなのである。二幕ではドラマ性が中心になって来るが、その中でも随所に見せ場を作り、観客を飽きさせない。今までの大劇場演劇になかった新しいスタイルの、ショーと演劇が合体した姿がある。

主演の堂本光一は、今回が三回目ということもあって、だいぶ手馴れて来た感じが見て取れる。小柄ながら舞台での存在感は大きく、何よりも観客を引き付ける魅力を持った素材である。彼の人気についてはいまさらここで改めて述べるまでもないが、テレビではうかがい知れない実力を、この舞台で着実に身に付けて来ていることがわかる。単なるハンサム・ボーイのアイドルではなく、身近な感じのする愛嬌が舞台を楽しくしている。アドリブで観客を笑わせる余裕も出て来たようだ。しかし、ここで変に「慣れる」ことなく、もっと大きくなってほしい。それだけの魅力を持っているのだから。共演の今井翼、秋山純も好演で脇を支えている。今拓哉がもう少し存在感を示して欲しかったのと、宝塚出身の樹里咲穂のパターン化した演技が惜しい。バックダンサーたちのアンサンブルも良くまとまっており、楽しい舞台になった。最後に、ファンサービスとして堂本のミニ・コンサートがあるが、これはなくもがな、という気もする。

「ショー・マスト・ゴー・オン」。ジャニー喜多川がこの「ショー・劇」に託した想いが、観客の胸に伝わってくれることを望むと同時に、そういう精神を持ったプロデューサーが日本のショービジネス界にいてくれることを心強く思う。


http://www.yumekoubou.co.jp/Enpaku/review47.htm
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