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MOVIE WALKER PRESS    2021/2/11

「もしジャニーさんだったら、このコロナ禍のエンタテインメント業界でどんなことをしていたのだろうと何度も考えました。でも同時に、ジャニーさんがいまの世の中の状況を見ることなく天国に行ったのは幸せなことだったのかもしれないとも思うようになりました。思い通りにならないかたちで進んでいくことの方が多くて、ファンを大事にしていたジャニーさんにとって、みんながよろこんでいる姿を直に見ることができないのは、なによりもつらかったと思います」。

KinKi Kidsの堂本光一は、2019年7月9日に亡くなった恩師ジャニー喜多川についての想いをこのように語る。「誰よりも責任を負いながら働きつづけてきた人ですし、僕のことを褒める人ではありませんでしたからね。こうして『Endless SHOCK』が20周年を迎えて、映画館のスクリーンで上映することについて、もしジャニーさんが言葉をかけてくれるなら…。そう考えると、ゆっくりお休みになっていてください、という気持ちですね」。

2000年にジャニー喜多川の作・構成・演出、堂本の主演で開幕した「MILLENNIUM SHOCK」からはじまったミュージカル「SHOCK」。2005年に堂本自身が脚本と演出に参加し、内容を一新した「Endless SHOCK」として生まれ変わり、2013年には上演開始からわずか12年5か月で通算1000回公演を達成。

そして2014年には松本幸四郎(現:松本白鸚)主演の「ラ・マンチャの男」を超え、日本演劇界におけるミュージカル単独主演記録を更新。現在までの総上演回数は1791回にのぼり、いまなお記録を更新しつづけている。
そして今回、堂本自らが監督を務めた『Endless SHOCK』(公開中)が、劇場映画として上映されることとなった。

その20周年のアニバーサリーイヤーとなった2020年。2月に行われていた東京・帝国劇場(帝劇)での公演が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で急遽中止が決定する。「このまま何事もなく終わるのかなと思っていた矢先のことでした。千秋楽を迎えた達成感で“ロス”になるのとはまるで違う、僕をはじめ、ほかのスタッフやキャストの方々もみんな、いきなり自分たちの武器を奪われたような気持ちを味わいました」と、堂本は未曾有の事態に直面した当時の心境を振り返る。
「でもその時に、無観客であれば皆さんに観てもらうことができるのではないかという話になり、どういうかたちで使うのかはわからないけれど、とりあえず公演を映像として記録することが決まったんです」。

公演中止後、本来であれば約1800人で埋められるはずの観客席に誰もいない状況のなかで、堂本たちキャストはステージに上がり演じ抜く。クレーンカメラ3台やドローンカメラを含む計16台のカメラは自由自在にステージをとらえ、「SHOCK」の代名詞ともいえる堂本の迫力満点のフライングはもちろん、キャストの目の輝きひとつさえも逃さない距離で、そのダイナミックなパフォーマンスが記録された。

 

2020年7月、堂本はこの「SHOCK」シリーズを20年にわたって牽引してきた功績が評価され、第45回菊田一夫演劇大賞を受賞。その前後から“ニューノーマル”な状況下での新たな「SHOCK」を自ら構想し、9月と10月に大阪の梅田芸術劇場で「Endless SHOCK」のスピンオフとなる「Endless SHOCK -Eternal-」を上演。パフォーマンスの変更や舞台セットの簡素化、上演時間も幕間なしの2時間になるなど、感染リスクを低減させるための創意工夫は大きな賛辞を集めることに。

「大阪公演の時に、来年また帝劇で上演する時にも通常の『Endless SHOCK』はできないだろうなと感じ、なにかもうひとつおもしろいことはできないだろうかと考えるようになりました。『-Eternal-』はあくまでもスピンオフ。『Endless SHOCK』を観たことがない人が楽しむにはどうしたらいいか、両方とも楽しんでもらうにはと考えた結果、同じ時期に映画館で上映するという選択にたどり着きました」。

 

映画館で上映されるにあたり「監督」として編集作業にも携わった堂本。「いままでも公演を収めたBlu-rayを出したことがありました。その時には“劇場で観ている”ということを念頭に置いていたのですが、今回は観ていただく場所が映画館に変わる。なのでいままでとは異なり、ひとつの映像作品としてどう残そうかというのを模索していきました」と、“見せ方”へのこだわりをのぞかせつつ、「でも撮影した段階では映画館での上映を念頭に入れていなかったし、正直なところ、心残りな部分はたくさんあります」と本音を吐露。

「『もっといいカットはないだろうか』と何度も探して、そのたびに『ないなぁ…』って(笑)。撮影時は時間の制約もあったし、コロナについてもわからないことがあまりに多すぎて難しかったのですが、編集していくうちにもっともっといろんな角度から撮影しておけばと欲が出てしまいましたね」と、作品にかける思い入れの強さをのぞかせた。

 

来年2022年に「KinKi Kids」はデビューから25周年。堂本は歌手としての活動と同時に、クリエイターとして「SHOCK」という舞台作りに長年携わってきた。「やってることややるべきこと自体は、いままでと変わらないんです」と、今回初めて「監督」として作品に携わった手応えを明かす。「ダンスにせよ殺陣にせよ、色々な要素にはそれぞれのプロフェッショナルと呼べる方々が、どうすればより良くなるかという思いを持って臨んでくれている。だから監督としてやるべきことは、それぞれの人が抱く想いが、間違った方向に行かないように舵を取ることだと思っています」。

昨年、少年隊のメンバーで近年は舞台演出家として活動していた錦織一清と、「SHOCK」にも出演したことのある植草克秀がジャニーズ事務所を退所。また、TOKIOの長瀬智也が2021年春をもってジャニーズ事務所を退所し、裏方として新たな道を切り拓いていくことを発表した。SixTONESやSnow Manなど次世代グループの活躍とともに、新陳代謝の時期を迎えようとしているジャニーズ。堂本もいずれクリエイターとして新たな道を歩むことになるのだろうか。
「僕は『なにがなんでも自分が』と思うようなタイプではないので、やるべきならやるし、といった気持ちで構えています」と、今後も“作る側”と“演じる側”の両方でバランス感を持って活動していく意欲を見せる。

 

そして「長瀬に関しては年齢も同じだし、事務所に入ったのもほぼ同期。彼自身が新しい道を行こうとすることを誰にも止めることはできないし、いままでと変わりなく彼を応援していこうと思っています。それに僕自身、少年隊というグループからすごく影響を受けながら活動してきたので、退所という決断を寂しく思う気持ちも少なからずあります。でも自分としてはいままでと変わらないのかな、と。なにかを作らなければいけない時、壁にぶち当たった時、きっとこれからも、いままでのように『PLAYZONE』を観るんだろうな。いまはそう感じています」と、新たなスタートを切った先輩、いままさに旅立とうとしている仲間へ思いを馳せた。

 

最後に堂本は、苦しいアニバーサリーイヤーとなった2020年について、「打撃を受けたのはエンタメ業界に限りませんし、世界中のみんなが同じ痛みを感じた一年だったと思います」と振り返り、「この映画館での上映も、帝劇で上演する『-Eternal-』にしても、このコロナ禍がなかったら作ろうとも思っていなかった作品。なので僕は、『こういう状況だから…』というネガティブな気持ちではなく、いまだから生みだせるものがあるのだというポジティブな気持ちでいます」と笑顔を見せる。

 

そして「でもアクセルばかりを踏んでいても危ないので、周りをよく見ながら、その時の状況に対応しながら柔軟性を持って動いていくことが大切だと感じています。なによりも、この物語のメッセージとしてある“Show Must Go On!”という言葉は、きっとどんな時代にも当てはまる。作品を観てくれた皆さんに、なにか少しでも伝わるものがあればいいなと願っています」と結んだ。

構成・文/久保田 和馬

 

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